交通事故で損害賠償できる損害の中に「慰謝料」というものがあります。慰謝料と慰謝料に該当する費用について解説します。
慰謝料とは
交通事故によって被害者が受けてしまう精神的な被害に対する賠償のこと
です。
慰謝料の「精神的な被害」は、積極損害や消極損害と違って、いくらという金額がだしにくい、というか出せないものです。
人によって「精神的な被害」は異なるからです。第三者が心の中の心理的状態を判断することはできないのです。
「損害賠償請求で慰謝料の損害額が出ない」というのでは損害賠償自体が成立しないので、一定の基準を元に慰謝料額が決まっているのです。
傷害慰謝料
- 入院・通院の期間
- ケガの状態
によって一定の基準額がきまっています。
後遺障害慰謝料
- 後遺障害等級
によってある程度定額化されています。
死亡慰謝料
- 死亡した本人の家族内の立場
によってある程度定額化されています。
入院・通院したのちに後遺障害が残った場合
傷害慰謝料 + 後遺障害慰謝料
ケガをして入院し、その結果死亡した場合
傷害慰謝料 + 死亡慰謝料
傷害事故の算定基準別の慰謝料
自賠責保険基準
支払額
1日あたり4,200円
※妊婦が死産または流産した場合は事故と死産・流産との因果関係が認められれば別に慰謝料が認められます。
対象日数
「実治療日数を2倍した数」と「治療期間の日数」の少ない方が採用される
実治療日数とは
実治療日数とは実際に治療を行った日数のことで、10回の病院に言った場合には10日とカウントされます。
治療期間の日数とは
ケガの治療開始日から治療終了日までの期間のことです。
治療開始日
事故後7日以内に治療開始した場合 : 事故日が起算日
事故後8日以降に治療開始した場合 : 治療開始日の7日前が起算日
転院などで治療が中断した場合
治療の中断期間が14日以内の場合は、その中断期間中の人数を治療期間に含める
治療の中断期間が15日以上にわたる場合は、当初の治療期間と再治療期間に分離して当初の治療期間に7日を加算する
同じ病院で治療が中断された場合は、対象が同一傷病であれば通算して治療期間が産出される
治療終了日
治癒日(治癒したとみなされる日)が治療終了日から7日以内の場合、治癒日が治療終了日となる
治癒日が治療終了日から8日以降の場合、治療終了日に7日を加算する
治療終了日が「治癒見込」「中止」「転医」「継続」となっている場合は、治療終了日に7日を加算する
任意保険基準
保険会社が個別に支払い基準を設定
支払例
入院期間が2ヶ月、通院期間が3か月の場合
軽傷(打撲、挫傷、擦過傷、捻挫など)の場合 : 80万円
通常(前腕骨折、膝関節痛脱臼など)の場合 : 88万円
重症(頭蓋骨複雑骨折、脳挫傷、腹部損傷・破裂など)の場合 : 100万円
弁護士基準
任意保険基準よりも高い慰謝料が設定されます。
参考:入院・通院慰謝料表
支払例
入院期間が2ヶ月、通院期間が3か月の場合 : 154万円
慰謝料の増額
基本的には前述した通りで、慰謝料の金額というのはある程度定額化されています。しかし、ケースによっては慰謝料が増額できるケースがあるのです。
ケース1.加害者側の過失の大きさ
- 飲酒雲煙
- スピード違反
- 居眠り運転
- 無免許運転
- 信号無視
- わき見運転
など
ケース2.事故後の態度の悪さ
- 不自然・不合理な供述
- 不誠実な態度
- 証拠隠滅
- 救護義務違反
- ひき逃げ
- 被害者への責任転嫁の言動
など
ケース3.他の損害項目に入らないものを慰謝料にする場合
本来は消極損害である逸失利益に入らない項目だけれども、消極損害として妥当性がある場合は、慰謝料を増額することでカバーするケースがあります。
ケース4.被害者に特別な事情がある場合
- 妊婦が胎児を流産
- 交通事故が原因で婚約破棄
- 交通事故が原因で離婚
など
まとめ
慰謝料は交通事故によって、被害者が負った精神的な被害を請求するものです。
心理的なダメージは第三者から図ることはできないため、本来の趣旨とは異なるかもしれませんが、一定の基準の元、「ケースに応じて慰謝料(精神的な被害)はいくら」というものが決まっているのです。
ただし、前述した通りで慰謝料を増額できるケースもあるので、上記のケースに該当するような場合は慰謝料の増額を要求してみましょう。