目次
後遺症、後遺障害というのは症状が事故前の状態に回復しきれないことを意味します。この場合の損害賠償というのは傷害の損害賠償とは別に請求できるものなのです。
後遺症(後遺障害)の損害賠償請求
後遺症(後遺障害)とは
傷害を受けた結果、身体機能に障害が残り、治療をしても事故前の状態にも戻らないもの
を言います。
事故前の状態に戻らずに身体機能に障害が残ってしまう後遺症(後遺障害)の場合は、当然のように傷害の治療が終わっても、事故前と比較して生活に損害が出ていると見なされるため、損害賠償請求が可能になるのです。
後遺症(後遺障害)の損害賠償は傷害とは別に計算する
一般的に傷害による損害賠償と後遺症(後遺障害)による損害賠償は別に算定して合算した金額が合計の¥損害賠償額になります。
自賠責保険でも、傷害と後遺障害は保険金が分けられているのです。
後遺症(後遺障害)があった場合の損害賠償額
傷害の損害賠償額
+
後遺症(後遺障害)の損害賠償額
- 後遺障害に伴う将来の治療費・介護料
- 後遺症による逸失利益
- 後遺症に対する慰謝料
=
後遺症があった場合の損害賠償額
後遺症(後遺障害)の定義
「どんな症状の場合後遺症(後遺障害)とするのか?」は後遺障害別等級表・労働能力喪失率に法律によって定められています。
後遺障害別等級表・労働能力喪失率
等級 | 後遺障害 | 保険金額 | 労働能力喪失率 | |
---|---|---|---|---|
第1級(常時介護を要する) | 1 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 4000万円 | 100/100 |
2 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | |||
第1級 | 1 | 両眼が失明したもの | 3000万円 | 100/100 |
2 | 咀嚼及び言語の機能を廃したもの | |||
3 | 両上肢をひじ関節以上で失つたもの | |||
4 | 両上肢の用を全廃したもの | |||
5 | 両下肢をひざ関節以上で失つたもの | |||
6 | 両下肢の用を全廃したもの | |||
第2級(常時介護を要する) | 1 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 3000万円 | 100/100 |
2 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | |||
第2級 | 1 | 一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの | 2590万円 | 100/100 |
2 | 両眼の視力が0.02以下になつたもの | |||
3 | 両上肢を腕関節以上で失つたもの | |||
4 | 両下肢を足関節以上で失つたもの | |||
第3級 | 1 | 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの | 2219万円 | 100/100 |
2 | 咀嚼又は言語の機能を廃したもの | |||
3 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | |||
4 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | |||
5 | 両手の手指の全部を失つたもの | |||
第4級 | 1 | 両眼の視力が0.06以下になつたもの | 1889万円 | 92/100 |
2 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの | |||
3 | 両耳の聴力を全く失つたもの | |||
4 | 一上肢をひじ関節以上で失つたもの | |||
5 | 一下肢をひざ関節以上で失つたもの | |||
6 | 両手の手指の全部の用を廃したもの | |||
7 | 両足をリスフラン関節以上で失つたもの | |||
第5級 | 1 | 一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの | 1574万円 | 79/100 |
2 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |||
3 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |||
4 | 一上肢を腕関節以上で失つたもの | |||
5 | 一下肢を足関節以上で失つたもの | |||
6 | 一上肢の用を全廃したもの | |||
7 | 一下肢の用を全廃したもの | |||
8 | 両足の足指の全部を失つたもの | |||
第6級 | 1 | 両眼の視力が0.1以下になつたもの | 1296万円 | 67/100 |
2 | 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの | |||
3 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの | |||
4 | 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの | |||
5 | 脊柱に著しい奇形又は運動障害を残すもの | |||
6 | 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの | |||
7 | 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの | |||
8 | 一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指を失つたもの | |||
第7級 | 1 | 一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの | 1051万円 | 56/100 |
2 | 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの | |||
3 | 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの | |||
4 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |||
5 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |||
6 | 一手のおや指及びひとさし指を失つたもの又はおや指若しくはひとさし指を含み三以上の手指を失つたもの | |||
7 | 一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指の用を廃したもの | |||
8 | 一足をリスフラン関節以上で失つたもの | |||
9 | 一上肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの | |||
10 | 一下肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの | |||
11 | 両足の足指の全部の用を廃したもの | |||
12 | 女子の外貌に著しい醜状を残すもの | |||
13 | 両側の睾丸を失つたもの | |||
第8級 | 1 | 一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になつたもの | 819万円 | 45/100 |
2 | 脊柱に運動障害を残すもの | |||
3 | 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの | |||
4 | 一手のおや指及びひとさし指又はおや指若しくはひとさし指を含む三以上の手指の用を廃したもの | |||
5 | 一下肢を5センチメートル以上短縮したもの | |||
6 | 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | |||
7 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | |||
8 | 一上肢に仮関節を残すもの | |||
9 | 一下肢に仮関節を残すもの | |||
10 | 一足の足指の全部を失つたもの | |||
11 | 脾臓又は一側の腎臓を失つたもの | |||
第9級 | 1 | 両眼の視力が0.6以下になつたもの | 616万円 | 35/100 |
2 | 一眼の視力が0.06以下になつたもの | |||
3 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの | |||
4 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |||
5 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |||
6 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの | |||
7 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの | |||
8 | 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの | |||
9 | 一耳の聴力を全く失つたもの | |||
10 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |||
11 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当に制限されるもの | |||
12 | 一手のおや指を失つたもの、ひとさし指を含み二の手指を失つたもの又はおや指及びひとさし指以外の三の手指を失つたもの | |||
13 | 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの | |||
14 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの | |||
15 | 一足の足指の全部の用を廃したもの | |||
16 | 生殖器に著しい障害を残すもの | |||
第10級 | 1 | 一眼の視力が0.1以下になつたもの | 461万円 | 27/100 |
2 | 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの | |||
3 | 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |||
4 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたものの | |||
5 | 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの | |||
6 | 一手のひとさし指を失つたもの又はおや指ひとさし指以外の二の手指を失つたもの | |||
7 | 一手のおや指の用を廃したもの、ひとさし指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の三の手指の用を廃したもの | |||
8 | 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの | |||
9 | 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの | |||
10 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | |||
11 | 一下肢の三大関節の一関節の機能に著しい障害を残すもの | |||
第11級 | 1 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの | 331万円 | 20/100 |
2 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | |||
3 | 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |||
4 | 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |||
5 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの | |||
6 | 一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの | |||
7 | 脊柱に奇形を残すもの | |||
8 | 一手のなか指又はくすり指を失つたもの | |||
9 | 一手のひとさし指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の二の手指の用を廃したもの | |||
10 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの | |||
11 | 胸腹部臓器に障害を残すもの | |||
第12級 | 1 | 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの | 224万円 | 14/100 |
2 | 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | |||
3 | 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |||
4 | 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの | |||
5 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい奇形を残すもの | |||
6 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | |||
7 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | |||
8 | 長管骨に奇形を残すもの | |||
9 | 一手のなか指又はくすり指の用を廃したもの | |||
10 | 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの | |||
11 | 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの | |||
12 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | |||
13 | 男子の外貌に著しい醜状を残すもの | |||
14 | 女子の外貌に醜状を残すもの | |||
第13級 | 1 | 一眼の視力が0.6以下になつたもの | 139万円 | 9/100 |
2 | 1眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの | |||
3 | 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの | |||
4 | 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |||
5 | 一手のこ指を失つたもの | |||
6 | 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの | |||
7 | 一手のひとさし指の指骨の一部を失つたもの | |||
8 | 一手のひとさし指の末関節を屈伸することができなくなつたもの | |||
9 | 一下肢を1センチメートル以上短縮したもの | |||
10 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指以下の一又は二の足指を失つたもの | |||
11 | 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの | |||
第14級 | 1 | 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの | 75万円 | 5/100 |
2 | 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |||
3 | 一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたものの | |||
4 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | |||
5 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | |||
6 | 一手のこ指の用を廃したもの | |||
7 | 一手のおや指及びひとさし指以外の手指の指骨の一部を失つたもの | |||
8 | 一手のおや指及びひとさし指以外の手指の末関節を屈伸することができなくなつたもの | |||
9 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの | |||
10 | 部に神経症状を残すもの | |||
11 | 男子の外貌に醜状を残すもの |
後遺症(後遺障害)の損害賠償額は
後遺障害に伴う将来の治療費・介護料(積極損害)
後遺障害の治療や介護に必要になる費用のこと
- 将来の治療費
- 付添介護費
- 家屋などの改造費
- 義肢などの葬儀費用
などがあります。
後遺症による逸失利益
後遺症が残ってしまう場合には事故前と同じように働くことができずに収入が減ってしまう可能性が高いのです。この収入の減少分を損害賠償で補償するのが逸失利益ということになります。
後遺症に対する慰謝料
後遺症が残ったことへの精神的苦痛の損害に対する損害賠償です。裁判所では自賠責保険の保険金額の8割程度を後遺症に対する慰謝料として考えています。
示談後に発症した後遺症の慰謝料はどうなる?
原則として示談のやり直しはできません。
示談書には「本件事故に関して、今後名目のいかんにかかわらず、当事者双方何らの請求をしないこと」という文言があり、これに同意することで示談が成立するからです。
しかし、裁判の過去の判例では、示談当時予測することのできなかったと見なされる後遺症が発生した場合は、損害賠償を認めています。
まとめ
後遺症(後遺障害)が残ってしまった場合には、傷害の損害賠償とは別に後遺症(後遺障害)の損害賠償が算定され、合算した金額が損害賠償請求が可能になるのです。