目次
交通事故の損害賠償請求について訴訟を起こした場合に、裁判所が審理をして、判決を出すことで解決を図ることになります。しかし、判決に至る前に「裁判上の和解」という方法で解決するケースもあるのです。今回は交通事故を民事訴訟(通常訴訟)の「裁判上の和解」について解説します。
「裁判上の和解」とは?
裁判所が係争者双方の主張を仲介して、譲歩案を出し、争いを解決すること
を言います。
裁判所という最強の第三者が公正な立場で譲歩案を出して、解決に導いてくれるため、費用も、時間も、手間もかかる裁判を早期に解決する方法として「裁判上の和解」は非常に有効なものなのです。
「裁判上の和解」のメリット
- 判決に行く場合と比較して費用が安く済む
- 判決と同じ効力のある和解調書が作成される
- 判決後の上訴がない為、成立と同時に解決する
- どちらかの言い分が100%通るのではなく、柔軟な妥協ラインで合意できる
- 双方合意のもと、和解できるのでスムーズな賠償金の支払いが期待できる
- 判決とは異なり、申し立ての内容を超えた根本の問題解決も可能
「裁判上の和解」では、直接的なコストはもちろん、時間的拘束の意味でも大きなコスト削減につながります。また、判決は申し立ての内容について白黒つけるものですが、この場合、敗訴した側には不満が残ってしまい、損害賠償金の支払いをしないなどのトラブルになることも往々にしてあるのです。「裁判上の和解」であれば、申し立ての内容以外のことにも言及し、どちらの言い分も理解した上での妥協ラインで譲歩案が作られるため、不満が残りにくいのです。
その上で、判決と同等の効力を持つので、交通事故の損害賠償請求ではかなり有効な選択肢となっているのです。
「裁判上の和解」の種類
1.訴え提起前の和解(即決和解)
簡易裁判所の指定日の出頭時に、その場で和解することを言います。その日のうちに和解調書が作成される「即決和解」です。「なぜ、当日に和解ができるのか?」というと、その日に和解したわけではなく、裁判の前に和解は完了している状態で、裁判所のお墨付きが欲しい場合に利用されるのが「即決和解」なのです。「即決和解」であっても、和解調書には法的効力、執行力があるため「合意は済んでいるけど裁判所に即時和解を申し立てて、和解調書を作ってもらいたい。」ときに利用されるものです。
2.訴訟上の和解
訴訟がスタートして、審理が進行していく中である程度の着地点が見えてきたと裁判官が感じたタイミングで、裁判官が「和解」を勧告するケースです。応じる、応じないは任意であり、判決を求めることも可能です。和解が成立すると和解調書が取られます。
「裁判上の和解」の流れ
訴え提起前の和解(即決和解)
- 即時和解の申し立て
- 簡易裁判所が期日を指定
- 当事者双方が出頭
- 和解調書の作成
- 和解調書の内容を確認して合意
- 和解内容に従った賠償金の支払い
- 解決
訴訟上の和解
- 訴訟
- 審理
- 裁判官の和解勧告
- 当事者双方が妥協して合意
- 和解調書の作成
- 和解内容に従った賠償金の支払い
- 解決
まとめ
交通事故の損害賠償請求に関する訴訟の場合は、損害賠償額が争点であることがほとんどですので、ある程度の相場観というのは、裁判官も、弁護士も、有しています。
そのため、被害者と加害者のかい離が大きくて訴訟になった場合にも、裁判官が双方の主張を聞いた上での妥当な妥協ラインを設定し、和解勧告をするケースが多いのです。