memo128_128交通事故を起こしてしまった場合には、加害者は3つの責任を負うことになります。これは今後の損害賠償請求(慰謝料請求)のベースとなる考え方なので被害者も理解しておく必要があります。

交通事故で加害者が負う責任には3つある

  1. 刑事上の責任
  2. 行政上の責任
  3. 民事上の責任

の3つです。これらはすべて別の手続きになるため、すべて並行して処理が進むことになります。

一つずつ解説します。

1.刑事上の責任とは

国は交通事故を引き起こしてしまった加害者に対して、刑事罰を科します。交通事故を起こした加害者に罰を与えることで、交通事故・交通犯罪を減らす、予防するために刑事罰を科しているのです。

刑法と道交法が適用されます。

刑事上の責任の法律

被害者を死傷させた場合

刑法第211条2の「自動車運転過失致死傷罪」

過失運転致死傷罪の場合,7年以下の懲役もしくは禁錮か,または100万円以下の罰金が科されることになります。

飲酒運転や無免許運転を伴い被害者を死傷させた場合

刑法第208条2の「危険運転致死傷罪」

危険運転傷害罪の場合には1月以上15年以下の懲役が科され,危険運転致死罪の場合には1年以上20年以下の懲役が科されることになります。

死傷者のない物損事故の場合

刑法上の処罰はありません。

ただし、飲酒運転や無免許運転など重大な交通時違反のある場合は、道交法による罰金、禁錮刑、懲役刑の刑事罰が、他人の建造物等を損壊した場合は道交法による「過失建造物損壊罪」によって罰が科されるのです。

2.行政上の責任とは

行政とは、国や地方公共団体が法規の範囲内で行う政務のことを意味します。ここでいう「行政」とは公安委員会のことを意味します。

行政上の責任というのは、免許停止や免許取り消しなどの行政処分のことを意味します。道交法に基づいて、違反点数に応じて免許停止や免許取り消し、交通反則金の納付などの行政処分が公安委員会により行われるのです。

この処分は運転者の過去3年間の交通違反や死傷事故を起こした時に課される違反点数の合計で決まります。たとえば、酒酔い運転で治療期間15日未満の人身事故を起こした場合には、酒酔い運転の25点と人身事故に対する3点が加算されます。

3.民事上の責任とは

民事とは刑事と反対のことを意味します。私法上の法律関係(民法など)から生じる現象、またはそれに関連する事柄のことを「民事」と呼びます。

民事上の責任というのは、被害者に対して加害者が金銭で賠償をする責任「損害賠償責任」を意味します。自賠法第三条や民法第709条に基づいて、加害者が被害者に対して損害賠償責任を負うのです。

交通事故の場合、民法の前に自賠法が優先的に適用されるため、自賠責保険での補償が行われた後に民法による損害賠償が行われます。(自賠法は人身事故のみに限られるので物損事故の場合は民法による損害賠償のみが行われます。)

示談交渉による示談や、調整、裁判などで民事による損害賠償が行われるのです。

まとめ

加害者が交通事故で負う責任は

  1. 刑事上の責任
  2. 行政上の責任
  3. 民事上の責任

があります。

被害者は治療や保険の手続きと並行して、賠償問題を解決するために法的な手続きも同時に進める必要があるのです。