graphline2128_128損害賠償額を計算する場合には、3つの損害賠償算定基準のうちどれから採用されます。計算のもととなる基準には大きな違いがあるのです。

損害賠償額の算定は複雑な計算が必要

損害賠償額を算定するためには「積極損害」「消極損害」「慰謝料」と実費以外の部分も算定しなければならず、複雑な計算式を用いた作業をすることになります。

できるだけ、ケースバイケースでの金額にならないように公平性を保つことを目的として、損害賠償額を算定するための基準と言うものが作られているのです。

3つの損害賠償算定基準

  1. 自賠責保険基準
  2. 任意保険基準
  3. 弁護士会(裁判所)基準

と3つの算定基準が存在します。

自賠責保険基準

自賠法に支払い基準が明記されているもので、補償金額は一番安く設定されています。

任意保険基準

損害保険会社が各社で設定している基準です。以前は統一基準があったのですが、現状では保険の自由化に伴い、一定の相場観はあるものの各社独自で基準を設けています。

弁護士会(裁判所)基準

弁護士会が過去の裁判所の判例を元に基準額を算定したものです。日弁連交通事故相談センター東京支部の作成する「交通事故損害算定基準(通称:赤い本)」が弁護士会基準になります。

元々は、東京地裁など裁判所が担当裁判官によるばらつきをなくすために裁判所基準を公開していたのですが、物価上昇との兼ね合いを加味して毎年改定することができず、同じ裁判所基準を使い続けていると定額化が低額化を招いてしまうとして、公開されないようになったのです。

そのため、現在では日弁連交通事故相談センター(日本弁護士連合会)が最新の判例を集積し、分析したうえで、物価上昇を考慮し、2年ごとに「交通事故損害算定基準」を発表しているのです。

他にも、東京三弁護士会交通事故処理委員会が毎年「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」を発表しています。

3つの損害賠償算定基準では弁護士会(裁判所)基準が有利

同じ損害でも、賠償額は算定基準によって違うのです。

算定基準ごとの損害賠償額の高い順番

自賠責保険基準 < 任意保険基準 < 弁護士会(裁判所)基準

となっています。

なぜ、基準によって損害賠償額が異なるの?

自賠責保険は強制保険なので、必要性最低限の補償額が基準となっています。法律で定められている金額なので高額な設定はそもそもできないのです。

任意保険は損害保険会社が設定しています。当然、保険会社はお金を支払う立場なので「できるだけ安く抑えたい」という意向が強く働きます。

弁護士会基準は、実際に示談が成立せずに裁判で判決が出た事例です。つまり、通常の損害賠償額よりも高額な支払いが成立したものを基準として作られているものです。弁護士は被害者の立場で裁判を行うので、多く損害賠償を取るための基準と言えます。

  • 保険会社は支払う側だから安く抑えたい → 安い基準
  • 弁護士はお金を支払わせる被害者側だから高くとりたい → 高い基準

となっているのです。

保険会社の言いなりで示談に応じるよりも、弁護士に依頼して示談交渉をしてもらう方が数百万円も高額な損害賠償額を受け取れるのは、「立場の違い」と「算定基準の違い」が大きく影響しているのです。

当然、弁護士会の基準は裁判をしたときの基準ですので、弁護士会基準で絶対に示談が成立するというわけではありませんが、交渉のプロである弁護士が弁護士会基準で交渉を行えば、任意保険基準よりも高額な損害賠償額が受け取れる可能性と言うのは非常に高いのです。

だからこそ、損害賠償請求では弁護士に依頼する必要があるのです。

交通事故に強い弁護士費用比較

こんなに違う3つの基準と損害賠償額

傷害事故の休業損害を例に3つの基準で損害賠償額がどのくらい違うのか?を比較しています。

傷害事故の休業損害

自賠責保険基準

給与所得者

事故前3か月分の収入 / 90日 × 認定休業日数

パート・アルバイト・日雇い労働者

日給×事故前3か月間の終了日数 / 90日 × 認定休業日数

事業所得者

農業・漁業従業者、およびその家族従事者の場合

(過去1年間の収入額 - 必要経費) × 寄与率 / 365日 × 認定休業日数

それ以外の場合

(過去1年間の収入額 - 必要経費) / 365日 × 認定休業日数

家事従事者

1日当たり5700円を限度

任意保険基準

仕事をしている人

現実の収入減少額とする

※1日当たりの収入が5700円を下回る場合は5700円が支払われます。また、対象日数は実休業日数都市、傷害の態様、実治療日数などを勘案して治療期間の範囲内で認定されます。

家事従事者

1日当たり5700円がしはわれる。

※家庭内の地位、家事労働の実態、傷害の態様、地域差を考慮して、これを超える金額が認定されるケースもあります。

仕事をしていない人

休業損害は認められない

弁護士会基準

仕事をしている人

給与所得者

事故前の収入を基礎として、ケガにより休業した日数分の収入が損害として認められる

事故前3か月分の収入 / 90日 × 休業日数

事業所得者

現実に収入が減っている場合に認められる。自営業者、自由業者の休業中の固定費支出(従業員給料、家賃)も損害として認められる

前年度の実収入 / 365日 × 休業日数

家事従事者

賃金センサス(厚生労働省が発表する賃金額の指標)を基に家事労働に従事できなかった期間が認められる。パートや内職を行っている兼業主婦の場合は、現実の収入額と賃金センサスのいずれか高い方が基準として採用される。

仕事をしていない人

失業者

労働能力及び労働意欲がある場合は、前職の収入や賃金センサスによる算出額が認められるケースが多い。

学生

卒業後就職が内定していた場合は、就職すれば得られたはずの給与額と賃金センサスの高い方が採用される。

比較の考察

明確に「○○円弁護士基準の方が高い」ということではないのですが

  • 弁護士基準の方が事業者所得に固定費(従業員給与や家賃)が含まれる
  • 家事従事者も賃金センサスで決定されるため、5700円と一律ではない
  • 仕事をしていない方でも認められるケースがある
    ・・・

などところどころの解釈が弁護士基準の方が条件が良くなっているのです。

判例に従い算出されるので、どのような交通事故であっても、ほとんどのケースで弁護士会基準を採用した方が損害賠償額は高くなるのです。