calculation128_128後遺症(後遺障害)のある事故の場合、本来得られたはずの利益が失われたことに対する逸失利益の損害賠償請求が可能になります。今回は後遺症(後遺障害)の逸失利益の損害賠償算定について解説します。

逸失利益の計算式

逸失利益は、事故による後遺症(後遺障害)によって労働能力が低下したと認められた場合に損害賠償請求で逸失利益を請求することができます。

逸失利益 = 年収 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数のライプニッツ係数

で計算されます。

例えば

年収400万円、35歳のサラリーマンが第9級10号の後遺障害が認められた場合

後遺障害別等級表・労働能力喪失率 参照

労働能力喪失率:35%

就労可能年数のライプニッツ係数 参照

ライプニッツ係数:15.803

逸失利益 = 400万円 × 35% × 15.803 = 2212万4200円

という計算になるのです。

後遺障害別等級表・労働能力喪失率での第9級の保険金額上限は616万円なので、残りの1,696万4200円は加害者の任意保険、加害者の自己負担で支払うことになります。

後遺障害別等級表・労働能力喪失率 抜粋

等級労働能力喪失率
第1級(常時介護を要する)100/100
第1級100/100
第2級(常時介護を要する)100/100
第2級100/100
第3級100/100
第4級92/100
第5級79/100
第6級67/100
第7級56/100
第8級45/100
第9級35/100
第10級27/100
第11級20/100
第12級14/100
第13級9/100
第14級5/100

逸失利益の計算に必要な収入算出

自身の収入額を証明できない場合は厚生労働省作成の賃金センサスの全年齢平均給与額が基準となります。

有職者(働いている人)

事故前1年間の収入額と後遺障害確定時の年齢に対応する年齢別の平均給与額(年収換算)のいずれか高い額を収入額とする

事故前1年間の収入額を立証できる35歳未満の人

事故前1年間の収入額 or 全年齢平均給与額の年相当額 or 年齢別平均給与額の年相当額

の高い額

事故前1年間の収入額を立証できない35歳未満の人

全年齢平均給与額の年相当額 or 年齢別平均給与額の年相当額

の高い額

事故前1年間の収入額を立証できない35歳以上の人

年齢別平均給与額の年相当額

幼児・学生・主婦

全年齢平均給与額の年相当額

※ただし、58歳以上の人で年齢別平均給与額の年相当額が全年齢平均給与額の年相当額を下回る場合は、年齢別平均給与額の年相当額

その他働く意思と能力を有する人

年齢別平均給与額の年相当額

※ただし、全年齢平均給与額の年相当額が上限

逸失利益の計算で収入を確定させるための基準

サラリーマンなどの給与所得者

  • 給与明細
  • 源泉徴収票

※手当や賞与は含まれます。

自営業者・個人事業主

  • 納税証明書

※収入が納税証明書と異なる場合は、領収書や帳簿で証明する必要があります。

主婦

  • 賃金センサスの女子労働者の全年齢平均給与額が基準

※兼業主婦の場合は、実収入と賃金センサスの女子労働者の全年齢平均給与額の高い方が採用されます。

幼児・未就労の学生、失業者

  • 賃金センサスの男女別全年齢平均給与額が基準

認められる労働能力喪失期間

ライプニッツ係数というのは労働能力喪失期間から計算されるもので、労働能力喪失期間が長ければ長いほどライプニッツ係数も高くなり、逸失利益の金額が高くなる仕組みとなっています。

労働能力の喪失が認められる期間は、原則18歳~67歳までとされており、症状固定と診断された日から67歳までの期間によって遺失利益が算定されることになります。

例外として、傷害の内容、部位、年齢によっては労働能力喪失期間が引き下げられるケースがあります。

また、症状固定から67歳までの年数が平均寿命の2分の1より短いケースでは、症状固定から平均寿命の2分の1の期間が労働能力喪失期間として採用されます。