note2128_128後遺症、後遺障害というのは症状が事故前の状態に回復しきれないことを意味します。この場合の損害賠償というのは傷害の損害賠償とは別に請求できるものなのです。

後遺症(後遺障害)の損害賠償請求

後遺症(後遺障害)とは

傷害を受けた結果、身体機能に障害が残り、治療をしても事故前の状態にも戻らないもの

を言います。

事故前の状態に戻らずに身体機能に障害が残ってしまう後遺症(後遺障害)の場合は、当然のように傷害の治療が終わっても、事故前と比較して生活に損害が出ていると見なされるため、損害賠償請求が可能になるのです。

後遺症(後遺障害)の損害賠償は傷害とは別に計算する

一般的に傷害による損害賠償と後遺症(後遺障害)による損害賠償は別に算定して合算した金額が合計の¥損害賠償額になります。

自賠責保険でも、傷害と後遺障害は保険金が分けられているのです。

後遺症(後遺障害)があった場合の損害賠償額

傷害の損害賠償額

後遺症(後遺障害)の損害賠償額

  • 後遺障害に伴う将来の治療費・介護料
  • 後遺症による逸失利益
  • 後遺症に対する慰謝料

後遺症があった場合の損害賠償額

後遺症(後遺障害)の定義

「どんな症状の場合後遺症(後遺障害)とするのか?」は後遺障害別等級表・労働能力喪失率に法律によって定められています。

後遺障害別等級表・労働能力喪失率

等級後遺障害保険金額労働能力喪失率
第1級(常時介護を要する)1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの4000万円100/100
2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第1級1両眼が失明したもの3000万円100/100
2咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3両上肢をひじ関節以上で失つたもの
4両上肢の用を全廃したもの
5両下肢をひざ関節以上で失つたもの
6両下肢の用を全廃したもの
第2級(常時介護を要する)1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの3000万円100/100
2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
第2級1一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの2590万円100/100
2両眼の視力が0.02以下になつたもの
3両上肢を腕関節以上で失つたもの
4両下肢を足関節以上で失つたもの
第3級1一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの2219万円100/100
2咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5両手の手指の全部を失つたもの
第4級1両眼の視力が0.06以下になつたもの1889万円92/100
2咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3両耳の聴力を全く失つたもの
4一上肢をひじ関節以上で失つたもの
5一下肢をひざ関節以上で失つたもの
6両手の手指の全部の用を廃したもの
7両足をリスフラン関節以上で失つたもの
第5級1一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの1574万円79/100
2神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4一上肢を腕関節以上で失つたもの
5一下肢を足関節以上で失つたもの
6一上肢の用を全廃したもの
7一下肢の用を全廃したもの
8両足の足指の全部を失つたもの
第6級1両眼の視力が0.1以下になつたもの1296万円67/100
2咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5脊柱に著しい奇形又は運動障害を残すもの
6一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指を失つたもの
第7級1一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの1051万円56/100
2両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
3一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
4神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5胸腹部臓器の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6一手のおや指及びひとさし指を失つたもの又はおや指若しくはひとさし指を含み三以上の手指を失つたもの
7一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指の用を廃したもの
8一足をリスフラン関節以上で失つたもの
9一上肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10一下肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11両足の足指の全部の用を廃したもの
12女子の外貌に著しい醜状を残すもの
13両側の睾丸を失つたもの
第8級1一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になつたもの819万円45/100
2脊柱に運動障害を残すもの
3一手のおや指を含み二の手指を失つたもの
4一手のおや指及びひとさし指又はおや指若しくはひとさし指を含む三以上の手指の用を廃したもの
5一下肢を5センチメートル以上短縮したもの
6一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
7一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8一上肢に仮関節を残すもの
9一下肢に仮関節を残すもの
10一足の足指の全部を失つたもの
11脾臓又は一側の腎臓を失つたもの
第9級1両眼の視力が0.6以下になつたもの616万円35/100
2一眼の視力が0.06以下になつたもの
3両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
6咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
8一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
9一耳の聴力を全く失つたもの
10神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当に制限されるもの
12一手のおや指を失つたもの、ひとさし指を含み二の手指を失つたもの又はおや指及びひとさし指以外の三の手指を失つたもの
13一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの
14一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
15一足の足指の全部の用を廃したもの
16生殖器に著しい障害を残すもの
第10級1一眼の視力が0.1以下になつたもの461万円27/100
2咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
3十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたものの
5一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
6一手のひとさし指を失つたもの又はおや指ひとさし指以外の二の手指を失つたもの
7一手のおや指の用を廃したもの、ひとさし指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の三の手指の用を廃したもの
8一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
9一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
10一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
11一下肢の三大関節の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級1両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの331万円20/100
2両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
6一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
7脊柱に奇形を残すもの
8一手のなか指又はくすり指を失つたもの
9一手のひとさし指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の二の手指の用を廃したもの
10一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
11胸腹部臓器に障害を残すもの
第12級1一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの224万円14/100
2一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい奇形を残すもの
6一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
7一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
8長管骨に奇形を残すもの
9一手のなか指又はくすり指の用を廃したもの
10一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
11一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
12局部に頑固な神経症状を残すもの
13男子の外貌に著しい醜状を残すもの
14女子の外貌に醜状を残すもの
第13級1一眼の視力が0.6以下になつたもの139万円9/100
21眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
3両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
4五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5一手のこ指を失つたもの
6一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
7一手のひとさし指の指骨の一部を失つたもの
8一手のひとさし指の末関節を屈伸することができなくなつたもの
9一下肢を1センチメートル以上短縮したもの
10一足の第三の足指以下の一又は二の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
11一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
第14級1一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの75万円5/100
2三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたものの
4上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6一手のこ指の用を廃したもの
7一手のおや指及びひとさし指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
8一手のおや指及びひとさし指以外の手指の末関節を屈伸することができなくなつたもの
9一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
10部に神経症状を残すもの
11男子の外貌に醜状を残すもの

後遺症(後遺障害)の損害賠償額は

後遺障害に伴う将来の治療費・介護料(積極損害)

後遺障害の治療や介護に必要になる費用のこと

  • 将来の治療費
  • 付添介護費
  • 家屋などの改造費
  • 義肢などの葬儀費用

などがあります。

後遺症による逸失利益

後遺症が残ってしまう場合には事故前と同じように働くことができずに収入が減ってしまう可能性が高いのです。この収入の減少分を損害賠償で補償するのが逸失利益ということになります。

後遺症に対する慰謝料

後遺症が残ったことへの精神的苦痛の損害に対する損害賠償です。裁判所では自賠責保険の保険金額の8割程度を後遺症に対する慰謝料として考えています。

示談後に発症した後遺症の慰謝料はどうなる?

原則として示談のやり直しはできません。

示談書には「本件事故に関して、今後名目のいかんにかかわらず、当事者双方何らの請求をしないこと」という文言があり、これに同意することで示談が成立するからです。

しかし、裁判の過去の判例では、示談当時予測することのできなかったと見なされる後遺症が発生した場合は、損害賠償を認めています。

まとめ

後遺症(後遺障害)が残ってしまった場合には、傷害の損害賠償とは別に後遺症(後遺障害)の損害賠償が算定され、合算した金額が損害賠償請求が可能になるのです。