memo128_128交通事故によって他人に損害を与えた場合には、被害者に対して金銭による賠償をしなければなりません。これを損害賠償というのですが、これはどのようなものなのでしょうか?ここでは損害賠償について解説します。

損害賠償とは

損賠賠償の定義

損害を与えてしまったものが、その損害を自ら埋め合わせること

を意味します。

損害賠償というのは、交通事故のみに適用されるものではなく、民事全般で発生する可能性があるものです。火災、浮気、婚約破棄、仕事や学校でのトラブル、医療事故・・・枚挙にいとまがないぐらい色々な損害賠償が発生しているのです。

損害賠償を定めた法律

民法第709条

故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う

というものです。民法は市民の生活全般に関与する法律のことですので、日常生活で損害を受けた被害者は「民法第709条」に則って、損害賠償を請求できるということになります。

ただし、民法では

損害賠償請求により利益を得るものが以下の4点を立証できない限り、損害賠償請求が認められません。

  1. 加害者側に故意または過失があること
  2. 加害者の行為が違法であること
  3. 事故と損害の因果関係
  4. 損害が生じたこと

つまり、「加害者が違法行為をした結果、その事故によって損害を受けた」ということが証明されない限り、裁判でも勝てないということになっているのです。

「あれっ?じゃあ交通事故で運転者がわざとでもなく、不注意などもしていないけど事故が起こってしまった場合は、損害賠償請求は成立しないの?」

と思ってしまいますが、実際に「自動車損害賠償保障法(自賠法)」ができる以前は「運転者の故意・過失」が立証できないが故に損害賠償請求が成立しないということが往々にして発生していたのです。

これを回避するために、民法よりも優先される民法特別法「自動車損害賠償保障法(自賠法)」が制定されたのです。

民法の特別法「自動車損害賠償保障法(自賠法)」とは?

自賠法は、被害者を保護し、加害者に立証責任を課した法律です。また、交通事故の人身事故の場合は、民法よりも優先して適用される法律なのです。

民法第709条

被害者側が以下の4点を立証しなければ賠償責任が成立しない

  1. 加害者側に故意または過失があること
  2. 加害者の行為が違法であること
  3. 事故と損害の因果関係
  4. 損害が生じたこと

自動車損害賠償保障法(自賠法)

加害者が以下の3つの要件を立証しなければ賠償責任が成立する

  1. 運行供用者と運転者が無過失であったこと
  2. 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと
  3. 自動車に構造上の欠陥または障害がなかったこと

通常の民法よりも、交通事故の人身事故の場合は、加害者側に不利な条件になっているのです。

「故意や過失」というのは立証するのが難しい為、被害者が立証責任を負うと損害賠償請求が成立しないケースが多発してしまうため、立証責任を加害者にしているのです。この自賠法の存在により、交通事故の人身事故の場合、事実上、かなりの確率で損害賠償が成立する仕組みとなっています。

自賠法が適用される事故

  • 交通事故の人身事故 → 自動車損害賠償保障法(自賠法)
  • 交通事故の物損事故 → 民法第709条
  • 交通事故以外の事故 → 民法第709条

となっており、同じ交通事故でも物損事故の場合は、被害者が立証責任を追うのです。

ちなみに自賠法では、加害者の定義を運転者だけではなく、運行供用者にまで広げています。運行供用者というのは、自動車の所有者、使用する権利を持っているもの、運行を行わせることで利益が出るもののことです。

バスの事故の場合、バスの運転手だけでなく、バスを所有する運行会社まで損賠賠償責任が問われるということになります。

未成年が運転者で車の所有者が親だった場合には、親も損害賠償責任が問われることになります。未成年者が運転者の場合、事実上資産や収入が不足し、支払い能力がないケースが多いので車の所有者である親と損害賠償の交渉するケースも多いのです。

まとめ

損害賠償とは

故意または過失によって損害を与えてしまったものが損害を金銭で補償すること

を意味します。

損害賠償は民法に定められているもので、交通事故以外の事故やトラブルでも適用されるのですが、交通事故の人身事故に限っては自賠法という特別法が優先され、より被害者が有利な条件で損害賠償が成立するようにしているのです。

交通事故の人身事故の場合、事実上、かなりの確率で損害賠償が成立する仕組みとなっています。